着物の日の豆知識
トイレ・車・椅子、崩れない動き方
着物には、ボタンもファスナーもありません。紐と帯だけで留まっています。そう聞くと不安になりますが、裏を返せば崩れるきっかけは、そう多くないということです。知っておくだけで一日の終わりの姿が変わる、ちいさな豆知識を集めました。福岡県糸島市の lovelye がご紹介します。
着物はなぜ崩れるのか
洋服は、ボタンやファスナーで留まっています。着物は違います。紐と帯、そして布の重なりだけで形を保っています。
だから着物は、じっとしている限りほとんど崩れません。崩れるきっかけは、体を動かしたときです。そして、その動きはいつも同じ顔ぶれです。
| 崩れやすい場面 | どこが崩れるか |
|---|---|
| トイレ | 裾・おはしょり |
| 車の乗り降り | 裾・帯の形 |
| 椅子に座る | 帯・衿元 |
| 大きく歩く | 裾が開く |
| 腕を高く上げる | 衿元・おはしょり |
lovelyeでは、お着付けのときにこの3つ(トイレ・車・座り方)を必ずお伝えしています。この記事は、その内容をそのまま文章にしたものです。お支度の前に読んでおいていただけると、当日の説明がすっと入ります。
豆知識:着物は「引いた場所」ではなく「別の場所」が緩みます
これは着物のいちばん面白いところで、いちばん厄介なところでもあります。
着物は一枚の布を体に巻きつけ、紐で留めているだけです。そのためどこか一か所を引くと、その分の布が別の場所から取られます。衿元を直すと裾が上がり、裾を下ろすとおはしょりが崩れる——という連鎖が起きます。
ですので、崩れてきたときは、引っぱらないのがいちばんの正解です。慣れた人が全体を見ながら直すなら別ですが、その場で気になる一か所だけを引くと、たいてい事態が悪くなります。
そもそも崩さなければいい、という話でもあります。ここから先が、その具体的な方法です。
歩き方
着物が崩れる原因の多くは歩幅です。
- 歩幅は普段の半分──内股ぎみに、小さく歩きます
- 階段や段差では裾を軽く持ち上げる──つまむのは右手で、前の裾を少しだけ
- 急がない──走ると裾が開き、足元から一気に崩れます
普段の感覚で歩くと、一歩ごとに裾が開き、下前がずり落ちてきます。「ゆっくり歩く」のではなく「小さく歩く」と覚えてください。
トイレの行き方
いちばんご質問が多いところです。順番さえ守れば崩れません。
- 袖は腕にかけておく──左右の袖が垂れて汚れないよう、腕にかけておきます。留め具は必要ありません
- 裾を下から順にめくる──長着 → 長襦袢 → 裾除けの順に、一枚ずつ内側へ折り込むようにめくり上げます
- めくった裾は帯の上あたりで抱える──落とさないよう腕でおさえます
- 終わったら、上から順に下ろす──裾除け → 長襦袢 → 長着。めくったときと逆の順番です
- 左右のシワを軽く下に引く──強く引かないでください
洋式トイレをお使いください。和式は裾を大きく広げることになり、崩れやすくなります。また、トイレは早めに済ませてください。ぎりぎりだと慌てて、順番を飛ばしてしまいます。
不安な方は、着付けのときにお声がけください。その場で一度ご説明します。
車の乗り降り
車は、崩れる場面としてトイレと並んで多いところです。ポイントは「おしりから乗って、足をそろえて回す」です。
乗るとき
- 車に背を向けて立ちます
- 頭をぶつけないよう気をつけて、おしりから先に座席に腰かけます
- そろえた両足を、あとから車内に回し入れます
降りるときは、この逆です。足をそろえて先に外へ出し、体を起こします。
足から乗り込むと、裾が大きく開き、帯も背もたれに当たって形が崩れます。必ずおしりからにしてください。
座席に座るときは、帯結びが背もたれに当たらないよう、浅く腰かけて少し前かがみになります。長距離の移動では、クッションを背中に入れるのもおすすめです。
椅子の座り方
- 浅く腰かける──背もたれに帯をつけません
- 座る前に、後ろの裾を軽く払う──裾を敷き込むとシワと型崩れの原因になります
- 足はそろえる──膝を開かないでください
- 背すじを伸ばす──猫背になると衿元が緩みます
長時間座る場面(式典・お食事など)では、ときどき浅く座り直すと、帯の形が保てます。
階段・食事・荷物
階段
右手で前の裾を軽く持ち上げ、一段ずつ上がります。降りるときは、足元が見えづらいのでとくにゆっくりと。
食事
ハンカチを衿元にはさんでナプキン代わりにします。テーブルに近づきすぎると帯が当たるので、少し離れて、体ごと前に傾けるようにしてください。
荷物
肩掛けカバンは避けてください。肩紐が衿を押さえつけ、一日かけて衿元が崩れます。手提げをお使いください。
お子さまを抱っこする予定がある方へ
七五三などで、お子さまを抱き上げる可能性がある方は、あらかじめお知らせください。
抱っこは帯まわりと衿元がいちばん崩れる動作です。避けられない場面もありますので、そうした場合はお着付けのときに、簡単なお直しの方法をお伝えします。
すべてを直す方法ではなく、「ここだけ整えれば見た目が戻る」という一点をお伝えする形です。ご自身でできる範囲に限ってお教えします。
七五三のお母さまの服装については 七五三、お母さまの服装は着物?洋服? もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q1. 出先で着崩れてきたら、どうすればいいですか?
まず引っぱらないことです。着物は引いた場所と別のところが緩むため、その場で一か所だけ直すと、たいてい事態が悪くなります。気になるときは、ショールや羽織るもので隠すのがいちばん安全です。そのうえで、背すじを伸ばして浅く座り直すと、帯まわりは落ち着きます。
Q2. 衿元が開いてきたら、引っぱって直していいですか?
おすすめしません。衿を引くと、その分どこかが緩みます。多くの場合、引いた側の身八つ口や裾に影響が出て、かえって目立つ崩れ方になります。
Q3. トイレはどれくらいの頻度で行っていいですか?
回数の制限はありません。ただし一回ごとに少しずつ崩れます。当日は水分を摂りすぎないようにして、行くときは早めに、落ち着いて行っていただくのが安全です。
Q4. 帯が下がってきた気がします
帯は動くうちに少しずつ落ちてくることがあります。ご自分で引き上げないでください。帯揚げや帯締めが緩み、一気に形が崩れます。気になる場合は、背すじを伸ばして浅く座り直してみてください。
Q5. 自分で着物を着られるのですが、直し方も教えてもらえますか?
ご自分で着られる方でしたら、お着付けのときにご相談ください。どこまでご自身で扱えるかによってお伝えする内容を変えています。
Q6. 着付けのときに、この説明はしてもらえますか?
はい。トイレの行き方、車の乗り方、座り方は必ずお伝えしています。この記事を読んでおいていただけると、当日のご説明がより分かりやすくなります。
着付けのご予約・ご相談
お着付けのときに、トイレの行き方・車の乗り方・座り方を必ずお伝えしています。ご不安な点はその場でお尋ねください。
浴衣 ¥3,300/訪問着・留袖・袴 ¥5,500/振袖 ¥7,700/ヘアセット ¥4,400(税込)。福岡県糸島市のサロンにて。
